コンサルティングファームの中でも花形産業と言われている戦略コンサル業界ですが、ここでは、戦略コンサルタントの仕事について説明していきます。
戦略コンサルタントの仕事
戦略コンサルタントには具体的にどのような仕事があるのでしょうか?まずはじめに戦略コンサルの仕事の主な進め方ですが、「状況分析」→「仮設検証」→「プランの提示」という流れが一般的です。それぞれのプロセスについて簡単に見ていきましょう。
状況分析
企業の状況を客観的に把握したうえで、さまざまな角度から状況を詳しく分析します。そうすることで、顕在化している問題だけでなく、潜在的な問題も浮き彫りにします。また、問題点だけでなく、クライアントが持っている強みやチャンスについても分析しておくことで、より現状に即した現実的な戦略の立案ができるようになります。当然のことながら、状況分析は、詳細かつ正確であればあるほどいいです。
仮説検証
状況分析をもとに、経営戦略や事業戦略のプランを立てていきますが、始めから本プランを立てるのでなく、まずは仮設プランを立てます。そして仮設プランが、コスト、時間、人材などを見て、実行可能かどうかをシミュレーションします。仮設プランが実行可能だと検証ができるまで、何度も仮設プランを修正したり立て直したりします。
プランの提示
実行可能だと検証された仮設プランをもとに、本プランを作成します。本プランとして完成した経営戦略プランや事業戦略プランをクライアントのエグゼクティブに提示して、役員会等で承認を得て、戦略コンサルティングは完了します。ただ、これまでは戦略プランをクライアントに提示するまでが、戦略コンサルの仕事でしたが、最近では、戦略プランの提示だけでなく、戦略プランの実行方法も含め提示する必要があったり、クライアントが実行できるように伴走する必要があったりするケースも増えています。
戦略コンサルタントのキャリア
戦略コンサルタントのキャリアは、事業会社での課長、部長、本部長、役員等といった構成ではなく、コンサルティングファームでのアナリスト、コンサルタント、マネジャー、パートナーといったキャリア構成が一般的に採用されています。
キャリアによって違う仕事内容
戦略コンサルティングは、プロジェクトを組んで仕事を遂行しますが、プロジェクト内での役割は、キャリアによって変わりますので、キャリアごとにご紹介していきます。
アナリスト
アナリストは、コンサルティングファームでは、キャリアとしてのスタートポジションになります。仕事内容は、 ミーティングの議事録作成、ヒアリング及びインタビュー、各種情報の収集分析並びに資料の作成などです。泥臭い基本的な仕事ばかりですが、アナリストの集めた情報をもとにコンサルタントが仮説プランを構築していくので、重要な役割を担っていると言えます。
コンサルタント
プロジェクトの実務作業の要が、コンサルタントです。コンサルタントの一番重要な仕事は、戦略の仮説を立てることです。また、コンサルタントはアナリストに仮設の検証方針を示し、検証作業を進めていきます。そして要所要所でのプロジェクト会議やマネジャーとのディスカッションを経て、仮設の軌道修正をしていきます。仮設のクオリティはコンサルタントのスキルに左右されます。仮設検証、修正の仕事は、時間との勝負になるので、スケジュール管理能力もコンサルタントには求められます。
マネジャー
プロジェクトのマスタースケジュールを立て、進行に責任を持つのがマネジャーです。マネジャーはプロジェクト全体を見ながら、プロジェクト進行の妨げになるような要因を事前に取り除くなど、計画通りプロジェクトを進行させます。マネジャーの仕事には、「プロジェクト管理」以外にも、「顧客との折衝」や「予算管理」があり、高度なマネジメント能力の他にも、コミュニケーション能力がなければ務まりません。
パートナー
パートナーの主な仕事は顧客の新規開拓とプロジェクトの受注です。そのために、書籍を出版したり、講演をしたり、人脈を広げて、企画提案をしながら、プロジェクトを受注します。また、パートナーは、コンサルティングファームの経営メンバーでもあり、プロジェクトの成功だけでなく、ファームとしての成長についても責任を負っています。そのため、パートナーは自己資金を投じる能力も必要で、パートナーになれる人は、ほんの一部の人です。
戦略コンサルタントの給与
戦略コンサルタントの給与は、アナリストの年収で500~800万円、コンサルタントで900~1300万円と、一般的には高いかもしれません。この金額はあくまでも参考値で、実際には経験や実績に応じても違えば、各ファームによっても給与水準も業績賞与も異なります。戦略コンサルタントの給与については、ネットでサーチすれば、ある程度の給与水準はわかるかもしれませんので、調べてみるといいかもしれません。
戦略コンサルティングファームの特徴
戦略コンサルティングファームは、たくさんありますが、ここでは、代表的な3つのコンサルティングファームの特徴について説明します。
アクセンチュア
アクセンチュアは、世界で最も多い従業員数を誇る総合コンサルティングファームです。”High Performance. Delivered.”という企業コンセプトを掲げ、世界中の様々な分野・産業に対しコンサルティングを提供していますが、ストラテジー部門も大きな力を持っています。
ベイン・アンド・カンパニー
ベイン・アンド・カンパニーは、世界37カ国60拠点以上の支社を持つ、アメリカを本拠地とした世界的なコンサルティングファームです。「会社を健全に保つためには社員が快適に働けることが非常に重要」という理念から、残業時間が短いようです。「具体的に目に見える成果を出す」ことや「クライアントに変革をもたらす」ことを目標として、全社的に共有していて、会社のカルチャーにもなっていると言われています。
ドリームインキュベータ
元ボストン コンサルティング グループ (BCG)の日本代表の堀紘一が筆頭になり立ち上がった、日系の戦略コンサルティングファームです。「次世代のソニー・ホンダ社を100社創る」という企業理念をかつては掲げていましたが、現在では、「社会を変える 事業を創る」というミッションを掲げています。
戦略コンサルタントに必要なスキルと資格
ここでは、戦略コンサルタントに必要なスキルや資格について説明していきます。
身につけたいスキル
戦略コンサルタントとして、身につけたいスキルは、論理的思考力とコミュニケーション能力です。他にも忍耐力が必要だと言う先輩コンサルタントもいるかもしれませんが、論理的思考力とコミュニケーション能力は必須です。
論理的思考のことを、ロジカルシンキングと言いますが、状況を論理的に把握し、論理的に分析をし、論理的に戦略を構築し、論理的に戦略内容を説明する、このように戦略コンサルティングのどのフェーズにおいても、ロジカルシンキングが必要となります。
戦略コンサルタントの仕事は、ヒアリングやインタビュー、提案内容の説明に限らず、プロジェクトメンバーとのやり取りやクライアント企業のエグゼクティブやチームマネジャー等とのディスカッションなど、コミュニケーションの連続です。コミュニケーション能力が高ければ高いほど、業務を円滑に進めやすくなります。
あったほうがいい資格
戦略コンサルタントに絶対に必要だという資格はありません。しかし、「中小企業診断士」、「MBA」、「公認会計士」などの資格を持っていれば、戦略コンサルタントとしても、資格に関連する知識が活かせるし、資格を持っていることで、専門知識を有していることの証明にもなるので、信用の担保にもつながります。
戦略コンサルタントに向いている人の特徴
つぎに、戦略コンサルタントに向いている人の特徴について整理していきましょう。
熱意と根気がある
コンサルタントの仕事は一人ではできず、プロジェクトメンバーとともに進めていきます。もし熱意がなければ、プロジェクトの士気にも関わります。また、コンサルタントは企業の問題と対峙しなければなりません。その際、熱意と根気を持って仕事をすることがとても大切です。
いつも熱い心を持ち、忙しくても手を抜かない根気強さを持っている人は、戦略コンサルに向いている性格の持ち主です。
聞き上手
コンサルティングの第一歩は、クライアントの悩みや抱えている問題を把握することです。問題を把握する最短の方法が、クライアントからどこが問題なのかを聞き取ることです。ただ、問題を抱えている当事者であるクライアントでも、漠然と問題を抱えていたり、どんな問題があるかを言語化できていなかったりすることも多々あります。その場合、コンサルタントはどのような問題があるだろうと想像力を働かせながら、クライアントに問題を言語化させたり明確化させたりするために、いろいろな質問をクライアントに投げかける必要があります。
このように、ただ問題を聞き出せばいいということは少なく、問題把握のために、相手の立場にたって、親身になって聞いていくことができる聞き上手であれば、コンサルタントとしての資質のひとつを持っていることになります。
コミュニケーション好き
自分が心を開いていなければ、相手も心を開きません。これはわかりやすい理屈ですが、もし戦略コンサルのあなたがコミュニケーション嫌いだとしたら、それは致命的です。逆にコミュニケーションが好きであれば、プロジェクト進行にもプラスになります。人はコミュニケーションを取ればとるほど、お互いに安心感を持つことができれば、良好な関係にもつながります。コミュニケーション好きは、戦略コンサルに向いている性格だと考えられます。
論理的に考える習慣がある
戦略コンサルにはロジカルシンキングのスキルが必要です。新規事業のアイデアを出すときには、クリエイティブな能力も必要になるかもしれませんが、戦略コンサルティングの仕事には、とにかく論理性が要求されます。論理的に整合性がなかったり、論理が破綻したりした言動には、人は誰もついてきません。論理的にわかりやすく説明するように、いつも心がけているといった習慣がある人は、戦略コンサルに向いていると言えます。
プレゼン好き
コンサルタントは、自分で作成した資料の説明や現状分析のレポートなど、クライアントに発表する機会が多いです。また、仮設立案の根拠や背景を説明したり、戦略をプレゼンしたりする機会も多いです。若手のうちは資料作成やリサーチに割く時間が多いものの、マネージャーやパートナークラスになるにつれ、クライアントと折衝する時間が多くなり、プレゼンは避けて通れません。戦略コンサルとして活躍するには、プレゼン好きである必要があります。プレゼンスキルは営業力の強化にもなります。
学び好き
戦略コンサルの仕事は、脳に汗をかく仕事です。戦略コンサルには、幅広い知識だけでなく、専門的な知見も求められます。ビジネス環境も変化し、新たなトレンドも日々生まれています。戦略コンサルにとって、学びのゴールはありません。常に学んでいく必要があります。そして、常に脳に刺激を与えて、発想を豊かにしておきます。学び好きは、戦略コンサルには必要不可欠な精神的傾向だと言えます。
まとめ
この記事では、戦略コンサルタントの仕事について説明してきました。100の会社があれば、100の戦略が必要だと言っても過言ではありません。企業の戦略構築に関われる戦略コンサルの仕事の需要はこれからも高まっていくでしょう。あなたもぜひ戦略コンサルタントを目指してみてはいかがでしょうか。
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