コンサルティング業務委託契約書作成のポイントとは?印紙税についても解説

コンサルティング業務委託契約書の作成については、はじめてという人も少なくないでしょう。これからコンサル業務委託契約書の作成が必要な人のために、あるいはコンサル業務委託契約書を交わす必要がある人のために、そのポイントを説明していきます。ここでは、印紙税についても触れています。

コンサルティング業務委託契約書の意義

コンサルティング業務委託契約書の一番大きな意義は、委託者である企業と受託者であるコンサルタントの両者間で、コンサル業務における目的や目標を明確にし、共有することです。それと同時に、コンサル業務の目的や目標を契約書に記載しておくことも大切なことです。

業務内容や範囲などについて認識のズレをなくす

業務委託契約成立の後に、お互いの認識がズレていたりして、トラブルになることもよくあることです。認識のズレによるトラブルを避けるためにも、特に、「業務内容と範囲」と「業務の進め方や頻度」については、契約者双方で誤解のないように明文化しておきましょう。

 

まず大切なことは、業務内容や範囲を明確にすることです。企業側は「コンサルタントに何をしてほしいのか」、「どんな成果物を求めているのか」を明確にし、コンサルタント側は、「何をしないのか」、「何に対しては責任を負わないのか」などを明確にし、契約前に、お互いに認識のすり合わせを十分に行っておきましょう。

また次に、仕事の進め方や頻度についても明確にしておきます。企業側はコンサルタントに会社まで訪問して助言をしてくれると期待していたところを、コンサルタントはフルリモート対応を念頭に置いていたなんてことになれば、もめることになるかもしれません。また、週に最低でも2回から3回は打合せに応じてくれると思っていたら、週一回のみの対応となれば、結果は容易に想像がつきます。

このようなことのないように、会議以外でも電話やメール対応するなど、仕事をどのように進めるのか、そして、毎週いつ会議を行うなど、仕事の頻度についても明確にして、契約書に盛り込むようにした方がいいでしょう。

契約書は絶対に必要か?

コンサル業務の委託については、口頭でも契約が成立するので、必ずしも契約書が必要なわけではありません。ただ、口頭で約束をしておいて、コンサル業務が進んでいくうちに、認識のズレが生じたり、言った言わないの議論になったりすることもあります。このような問題を避けるためにも、契約書は必ず作成するようにしましょう。

 

コンサルティング業務委託契約書に記載すべき重要な契約条項

コンサルティング業務の契約書作成では、契約書の雛形がそのまま使えるようなものではなく、契約内容は一つひとつ異なるので、契約内容が忠実に反映されたオリジナルの契約書作りが必要です。そのための契約条項の整理ポイントを説明します。

コンサルティング業務の内容と範囲について

最も重要な契約条項として記載しておかなければならないのは、業務内容とその範囲についてです。
つまり「何に関してコンサルティングを行うのか」と「どこまでやるのか」を明確にして、その内容を具体的に契約書に記載します。新規事業に関してなのか、DX化推進に関してなのか、あるいは海外展開についてなのか、コンサルティングの内容をできるだけ具体的に明確にするとよいでしょう。また逆に、コンサルタントにとって「やらなくてもいいこと」や「対応外の業務」についても、業務範囲を明確にするために、契約書に明記しておきます。

責任の範囲について

「コンサルティングサービスを提供する」とひと口に言っても、その提供方法もいろいろです。

コンサルタントが課題解決のための提案をドキュメントにまとめて、クライアントに提出することを約束することもあります。また、会議に参加してコンサルタントが、クライアントの疑問に答えたり、提案やアドバイスをしたりしますが、クライアント側でメモや記録を取ることを重視し、コンサルタントは資料を特別に用意しないということもあります。

この2つのパターンはともに役務の提供ですが、明確に成果物をクライアントに納品するパターンもあります。

例えば、新商品開発のための市場リサーチ業務が委託内容で、結果レポートの提出が納品条件として契約書に記載があれば、リサーチ結果のレポートを委託者に提出し受理されることで、契約上の責任を全うしたことになり、そこではじめてコンサルタントは報酬を受け取ることができます。

このように何をもって「コンサルティングが全うされた」とするかを、契約書に明記しましょう。

報酬について

コンサルティング報酬については、

  • 報酬の金額や計算方法
  • 報酬の支払時期や支払条件
  • 報酬の支払方法

以上の3つの内容について、明確にしておきましょう。

成果物を納品する必要のあるコンサルティング業務の場合は、着手金と納品後の報酬金額が支払われるケースが多いです。一方、顧問契約方式の場合は、月額の報酬を定める固定報酬制や時間単価で報酬を決めるタイムチャージ制などが考えられます。報酬の計算方法や支払条件に疑義が生じないように、繰り返しになりますが、上記の3点について契約書に明記しておくことをおすすめします。

契約解除条件について

契約期間を満了すれば、契約を継続するかしないかの交渉になりますが、想定外の事態が起こらないとも限りません。そのため、想定外のことを想定しておいて、コンサルティング業務契約を解除できるようにしておいた方がいいです。

コンサルティング契約を解除できる理由として考えられるものとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • コンサルタントが期限内に成果物を提出する姿勢がない
  • コンサルタントがしかるべき理由もなく、委託者による調査等のコンサルティング業務に必要な依頼を拒否する
  • 委託者がコンサルタントに対して、コンサルティング報酬を期限どおりに支払わない
  • 秘密保持義務に違反したことがわかった
  • 当事者が反社会的勢力に属していること、あるいは属していたことが判明した

コンサルティング業務委託契約の種類

コンサルティング業務委託契約には、「委任」か「請負」の二種類の契約があります。契約交渉をする時や契約書を作成する時に、「委任」か「請負」の違いが意味するところをしっかり理解して、合理的かつ合法的に契約業務を遂行する必要があります。

準委任の契約

業務委託契約には、「請負」と「委任」の2つがあると説明しました。

実は、委任契約にも、「委任契約」と「準委任契約」の二種類の契約があります。この違いを簡単に説明しておくと、弁護士などが法律行為を行う契約を「委任契約」と言い、業務的であったり事務的な行為に関わる契約については「準委任契約」と言います。コンサルティング行為に関する契約は、準委任契約であることが一般的です。

では、準委任契約について説明すると、準委任契約というのは、結果に責任をもつのではなく、「仕事の過程」に責任を持つ契約です。わかりやすい例で言うと、医者の場合、病気が完治してから成功報酬が支払われるのではなく、患者を診察する行為に対して、診療報酬が支払われます。

このように、コンサル業務の準委任契約の場合、コンサルタントがクライアントに対して、責任をもって、アドバイスをしたり、改善策を提案したりする行為そのものが、「準委任契約」の業務内容となります。

請負の契約

「請負契約」は、準委任契約と違い、「仕事の過程」に責任を持つのではなく、「仕事の完成」に責任を負う契約のことを言います。瑕疵担保責任と言って、「仕事の完成」という「結果」に責任を持つのが「請負契約」の最大の特徴です。

「仕事の完成」は、例えば、納品しなければならないレポートだったり、要件定義書だったりします。完成したものにミスや瑕疵があれば修正して納品します。「仕事の完成」だと委託者が認めてはじめて報酬が支払われる仕組みです。また、仕事が完了していなければ、委託者がいつでも契約を解除することができるため、委託者側が有利な契約とも言えます。

 

コンサルティング業務委託契約書に印紙税は必要か?

契約書を作成する際に忘れてはならないことは、契約金額に応じた収入印紙を貼付し、印紙税を納めなければならないということです。コンサルティング業務委託契約書の場合は、準委任契約か請負契約かによって収入印紙が必要か否かが分かれます。

請負契約の場合は印紙税法上の「請負に関する契約書」に該当し、契約書に収入印紙を貼付する必要があります。収入印紙の金額は契約金額によって変わるため、国税庁のホームページ等で、確認してください。

一方、準委任契約の場合は、印紙税法が適用されないので、印紙税を納める必要はありません。

 

コンサルティング業務委託契約書作成の注意点は?

コンサルティング業務委託契約書作成の注意点について、「業務内容や範囲」と「業務の進め方」の2点に焦点を絞って説明します。

業務内容や範囲を明確に

業務内容の書き方として、例えば、「Webサイトについての助言」と漠然とした内容にせずに、「集客を目的とするWebサイトの企画及びアクセス解析、運用、コンテンツ記事などに関する助言並びに改善提案」というように、より具体的な内容にすることをおすすめします。

また、業務範囲を明確にするために、別料金や超過料金がかかる場合の条件や業務時間の上限についても明記するといいでしょう。依頼側の立場を考えた場合、業務内容に「その他上記に関連する一切の相談についての助言」という文言を契約書に加えておくこともできます。

業務の進め方についても明確に

業務の進め方についても、より具体的に契約書に明記することをおすすめします。

進め方について記載すべき内容は、誰が業務遂行をするのか、代理の人間が行ってもいいのかも明確にすべきです。また、フルリモート対応なのか、コンサルタントが企業に訪問する必要があるのかも明記します。その場合、毎月いつ何度訪問するのか、そして、訪問の際に何を行うのかも決めておくといいでしょう。

委託された業務の進捗や成果について、報告書等のレポートを提出するかどうかも、仕事の進め方としてポイントとなります。レポート提出が必要であれば、いつまでに提出すべきなのかも決めておくと、さらにいいかもしれません。

 

まとめ

コンサルティング業務委託契約書の作成のポイントや注意点について、ご理解いただけましたか?契約の内容はそれぞれで、同じものはひとつとしてありません。この記事の内容を参考にするのもおおいに結構ですが、個別に注意しなければならないことも当然ありますので、その際は必要に応じて、弁護士などの専門家に相談することもおすすめします。

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