昨今、大手コンサルティングファームから独立して、個人コンサルタントとして活躍している人も少なくありません。大手組織に所属しているのとは違い、個人コンサルタントはすべての業務を自分でこなさなければなりません。この記事では、個人コンサルタントについて説明をしていきながら、成功の秘訣についても考えていきたいと思います。
個人コンサルタントとは
個人コンサルタントとは、文字通り、個人でコンサルティングを行う人のことを言います。個人コンサルタントのなかには、コンサルティングファームを退職し、個人コンサルタントになるパターンもあれば、これまでの仕事の経験を活かして、個人コンサルタントとして活動している人もたくさんいます。
個人コンサルタントは、顧客である企業や個人のために、専門分野に関する情報を提供したり、業務支援など行ったりして、顧客の利益に貢献します。
個人コンサルタントは、大手コンサルティングファームなどの組織に所属していないので、営業活動や事務作業など、すべての業務を自分自身で行う必要があります。また、報酬やリモート対応にするかなどの仕事の条件について、自分の裁量で決める自由はありますが、自らの責任において、契約上の交渉を行います。
個人コンサルタントの仕事
個人コンサルタントの仕事は、企業や個人のクライアントの課題や問題点を洗い出し、解決策を示し、解決へ導いていくことです。解決方法は様々ですが、クライアントのために課題解決をするのが、個人コンサルタントの仕事です。
個人コンサルタントの役割
また、大手コンサルティングファームの仕事が解決のための指南役だとすれば、個人コンサルタントは、クライアントとともに課題解決をしていく伴走役であったり後方支援役だったりします。
クライアントが専門的な知識も含めて、すべてを勉強していくことは不可能です。また、技術や流行の変化が激しい今の時代、すべての情報を把握することもできません。そこで、クライアントは、コンサルタントの専門的な知識や新しい知見に頼ることになります。
その際に、要所要所でコンサルタントに相談に乗ってもらうというよりも、速い変化に対応するために、常にコミュニケーションが取れることをクライアントは望みます。
昨今では、即相談に乗ってくれて、即解決の糸口を示してくれるコンサルタントが求められていて、個人コンサルタントの大きな役割のひとつは、いつでも解決に向けてコミュニケーションを取ってくれる相談役的な役割となっています。
あまり現実的な例えではありませんが、個人コンサルタントには、「予約待ちのスーパードクター」ではなく、「いつでも相談に乗ってくれる町医者」のような役割が期待されています。
個人事業主として個人コンサルタントを始める
就職や転職サイトを見ていると、コンサル経験者ばかりの求人で、まずは大手のコンサル会社に就職しないと、コンサルタントにはなれないと思う人もいるかもしれません。
実際、個人コンサルタントとして活躍している人には、コンサルティングファームを退職して、フリーランスとしてコンサルをしている人もいれば、事業会社で長年業務経験を積んでからコンサルタントとして独立する人もいます。
実は、個人コンサルタントの始め方として特に決まりがあるわけではありません。「私は〇〇コンサルタントです!」と宣言すれば、その日からコンサルタントとして起業はできます。
ただし、社会的信用がなければ、顧客を得ることが難しいので、法人設立をする方法もありますが、多くは個人事業主として個人コンサルタントを始めています。
個人コンサルタントが起業するメリット
個人コンサルタントの起業の第一のメリットは、初期投資がかからないことです。仮に飲食業で起業する場合、店舗はもちろん、厨房機器や食器なども用意しなければなりません。個人コンサルタントであれば、店舗や事務所を構えることなく、起業することができます。
次に利益率です。飲食店で、高い利益率を確保するのは至難の業です。なぜなら、家賃や光熱費などの固定費も高く、食材費などの原価もかかれば、人を雇う人件費や集客のための広告費もかかるからです。
一方、個人コンサルタントは、自らの経験や知識が商品ですから、原価はゼロで、人を雇う必要もないので、利益率は高いです。
また、個人でコンサルタントを起業するには、特に資格は必要ありません。資格なしで起業できるのも、個人コンサルタントが起業するメリットです。
個人事業主開業に必要な手続き
個人事業主として開業するのに、最低限必要な手続きは、税務署に開業届を出すことだけです。開業届以外に、法人登記の手続きも、資格に関わる手続きも必要ありません。ただし、弁護士など有資格者でしかできない、交渉を伴う法務コンサル業務に関しては必要な手続きを済ませて、開業しなければなりません。
個人コンサルタントに役立つ資格
特に資格がなくてもコンサルタントとして働くことはできますが、取得しておけば役立つ資格もあります。ここでは、コンサルタントに役立つ資格を紹介します。
中小企業診断士
経営コンサルティングの際に、役立つのが中小企業診断士の資格です。中小企業診断士は国家資格で、合格難易度も高く、資格維持にもコストがかかる資格ですが、この資格があれば、ビジネス知識が豊富であることが証明され、コンサルタントとしての安心感や信頼感を得ることができます。
中小企業診断士は、文字通り、中小企業の経営に関するプロとも言うことができ、企業経営の問題点や課題点を洗い出し、解決方法や改善方法をアドバイスします。官公庁からの引き合いで、公的なコンサルタントとして、活躍することも可能です。
MBA
MBAも経営についてアドバイスする際に役立つものです。コンサルタントでMBAを取得している人も多くいます。MBAとは、「Master of Business Administration」の略で、経営学修士号のことを言います。
MBAは、大学で経営の修士号課程を修了した人が授与される学位ですが、経営についての知識はもちろん、実際的な技術も身につけることができます。また、ビジネス英語を身につける機会にもなり、グローバル企業でコンサルタントとして成果を発揮するためにも、積極的に取得を検討してもいいでしょう。
公認会計士
公認会計士も国家資格で、合格率も低く、難関と言われていますが、会計コンサルタントとして活躍したいのであれば、公認会計士を取得しておくと、集客の面でも有利になりますし、会計知識においての信用が担保されます。
公認会計士の資格があると、企業の会計だけでなく、資金繰りや財務戦略などについてのアドバイスにも信頼性が増し、取得しておくと大変役立つ資格です。
ファイナンシャルプランナー(FP)
ファイナンシャルプランナーは、税金、保険、投資、相続、資産管理など、「お金」に関しての専門家であることを、クライアントにアピールできる資格です。特に個人の財産に関わる相談に乗ることが多いですが、資産家や経営者の資産保全や資産運用について、ファイナンシャルプランナーの資格を活かして、アドバイスをしているコンサルタントもいます。
IT系資格
最近では、DX化の流行もあり、IT系のコンサルティング案件が増えています。ITを活用した課題解決は、IT部門だけではなく、経営や業務全般に関わり、ITコンサルタントの活躍の場も広がりつつあります。
ITストラテジスト試験やプロジェクトマネージャ(PM)試験、ITサービスマネージャ試験など、IT系の資格を取得することで、コンサルタントとしてのスキルアップにつながります。
TOEICやTOEFL
多くの企業がグローバル展開に積極的で、グローバル人材のニーズも高まっています。コンサルタントにとっても、英語力が必要条件だという案件も増えています。そこで役に立つのが、英語力を示すTOEICやTOEFLです。
TOEICやTOEFLは合否ではなく、得点で評価される試験ですが、TOEICは一般的に990点満点中、800点から850点で、TOEFLは120点満点中、80点以上で、ビジネスで通用する英語力があるとされています。
個人コンサルタントのための成功の秘訣
何事においてもそうですが、絶対に成功する秘訣はありません。しかし、個人コンサルタントとして、成功確率を上げる方法はあります。成功確率を上げる方法を、ここでは成功の秘訣として二つほどご紹介します。
自分の知識や経験を顧客にとっての価値に変換する
コンサルタントは、自分の知識や経験を活用して、顧客の課題を解決できて初めて、顧客はコンサルタントの存在意義や価値を感じます。
コンサルタントとして、自分の知識や経験があるだけでは、宝の持ち腐れです。この自分の知識や経験を、顧客目線での価値に、つまり「問題解決に役に立ちそうだ」「悩みを解決してくれそうだ」と、顧客から見えるように工夫することが、コンサルタントとしての成功の第一歩です。
顧客は、コンサルタントが問題を解決してくれそうだと期待できるから、コンサルティング契約を結んで、コンサルフィーを払おうという気になるものです。
例えば、もしあなたが、データサイエンスの知識があって、Pyshonでの開発経験もあるとすれば、まずは「私はITコンサルタントです」と名乗ることです。あるいはもっと具体的に、「私はDXコンサルタントです」と言ってもいいかもしれません。
そして、「私の経験があれば、企業のあらゆるDX化のニーズに対応し、DXを推進できます。」と、見込み顧客である企業側にとってメリットがあると言うのです。
こうして、企業の期待に応えることができることを宣言し、様々な企業に伝えていくことが、個人のコンサルタントにとっては、欠かすことのできない大切なことです。
専門性をセールスポイントにする
企業であれ、個人であれ、クライアントが個人コンサルタントにまず望むのは、経験に裏打ちされた、その人にしかない専門的な知見です。
株式上場を成功させたい企業は、IPO経験のある専門知識が豊富なIPOコンサルタントを探しているかもしれません。また、逆に、気象予報士であれば、気象予報の能力を地域の防災に役立てようと、気象予報士としてだけでなく、防災コンサルタントとしても活躍できるかもしれません。
コンサルタントの成功の秘訣は、「専門性をセールスポイントにする」ことです。特に個人コンサルタントであれば、「何でもやります!」という人よりも、「Webでの集客だけはとにかくお任せください!」と、「Web集客の専門家である」ことをアピールした方が、クライアントは詳しく話を聞きたいと思うものです。
「何でもやります」では、クライアントはどこに興味をもったらいいかもわかりません。何についてコンサルティングするのかを漠然とさせるのではなく、専門性をアピールすることがコンサルタントとしての成功の秘訣だと心得て、自分の知識や経験の棚卸をしてみましょう。
個人コンサルタントにとっての顧客獲得法
いくら自分で「私はコンサルタントです」と名乗っても、顧客がいないことには何も始まりません。個人コンサルタントにとって、顧客を獲得することは必要不可欠な仕事です。顧客をゲットするために、過去の人脈や知り合いに頼るだけでなく、積極的に情報発信をして、顧客獲得を狙うようにしていきましょう。ここでは顧客獲得のための方法を紹介しています。
無料セミナーや無料コンサルティングをきっかけにする
実績のないコンサルタントに相談をしようとは思わないのが顧客です。患者がたくさんで順番待ちの医者にかかりたいか、待合室に誰も患者がいない医者に診てもらいたいか、多くの人は、時間待ちしても前者の医者のところに行くでしょう。個人コンサルタントにとっても同じで、順番待ちをしてでも、相談に乗ってもらいたい、とクライアントに思われることを集客目標にしましょう。
ただ個人コンサルタントには、大手コンサルティングファームのような看板もなければ、実績があっても、クライアントには実績があることがわかりません。顧客には、実績があることや知識も能力もあることを伝えなければなりません。そこで、役立つのが、無料セミナーや無料コンサルティングです。
無料のセミナーやコンサルティングでは、クライアントに解決策を示す必要はなく、ただ「この人なら役に立ちそう。」「問題を解決してくれそう。」「力になってくれそう。」と思ってもらうだけでいいのです。そこから具体的な契約に向けて商談に進みます。
無料のセミナーやコンサルティングをするために、わざわざ会場を借りる必要もありません。セミナー情報を無料で掲載できるサイトもありますし、オンラインでお試しコンサルティングを受けることも可能です。
ホームページやSNSを利用する
WEBからの集客は最も効果的な集客ルートです。積極的にホームページやSNSで情報発信をしていきましょう。しかし、ホームページやSNSから直接契約までというわけにはいきません。無料のパンフレットをPDFでダウンロードできるようにしたりして、まずは顧客との接点を作りましょう。
顧客との接点ができたら、定期的にコンサルティングの事例などをメールで知らせたり、無料のセミナーやコンサルティングの案内をしたりして、契約につなげていきましょう。
まとめ
個人のコンサルタントは増えています。コンサルティングの仕事は、開業資金も最小で、特別な資格がなくてもスタートでき、しかも利益率が高い魅力的な仕事です。もしあなたが、個人コンサルタントとして、スタートできる可能性があれば、積極的にチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
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