コンサル会社と事業会社の違いについて、明確に理解しているという方はどれくらいいるのでしょうか。もしかしたら、コンサル会社も事業会社のひとつではないのかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。また、コンサル会社と事業会社ではいったい何が違うのでしょうか。
ここでは、コンサル会社や事業会社はいったい何なのか、その違いやそれぞれの特徴、そして、働くうえでのメリットなどを整理していきます。
コンサル会社と事業会社のそれぞれの定義
コンサル会社と事業会社の違いが、会社法などの法律で明確に定義されているわけではありません。この違いは、会社のあり方の違いによって、一般的にコンサル会社と事業会社という分けた呼び方がされているだけです。ここではコンサル会社や事業会社の定義をしていきますが、あくまでもビジネスの現場で一般的に使われている定義だとご理解ください。
事業会社の定義
事業会社とは、簡潔に言えば、「事業経営を行う会社」と定義されています。つまり「営利を目的として経済活動をする会社」の全てを指します。具体的には製造業であるメーカーや小売業のスーパーやコンビニ、携帯ショップや家電量販店、IT系のシステム開発会社など、あらゆる企業が事業会社です。目に見える商品を提供する企業だけでなく、宅配などの流通業や介護などのようにサービスを提供する企業も事業会社となります。
事業会社に含まれないのがコンサル会社
「営利を目的として経済活動をする会社」が事業会社だとすれば、ほとんどの会社が事業会社になりますが、事業会社に含まれない会社があります。代表的なものとして、弁護士事務所や会計事務所、そして金融業界に属する銀行や証券会社は事業会社ではありません。これ以外にもコンサルティング会社も事業会社に含まれません。もちろんコンサルティングファームと言われる大手コンサル会社も事業会社ではありません。
コンサル会社についてもう少し説明をしておくと、まず、コンサルとは、コンサルティングを略した言い方で、コンサルティングとは、顧客であるクライアントの経営や事業上の課題を解決するために助言をすることを言います。つまり、コンサル会社は自社で商品を開発して販売することはせずに、クライアント企業の問題解決や事業成長のために、知識・経験・ノウハウなどを提供することで、クライアントとともに収益を上げることを生業とします。
コンサルティングの対象となる事業の主体はクライアントになり、コンサル会社は事業主体ではないことから、コンサル会社は事業会社に含まないとされています。
特徴から見るコンサル会社と事業会社の違い
コンサル会社と事業会社では、プロジェクト単位で動くか、組織で動くかで、会社の特徴が異なります。
コンサル会社の特徴
クライアントの経営上の課題に対して、様々な角度から分析し、解決策を助言するのがコンサルティングですが、このコンサルティングは、プロジェクト単位で進められます。プロジェクトメンバーであるコンサルタントには専門性や広い知見が必要で、また高い成果を出すことが期待されますが、逆に、事業会社と関わることにより、新たな知識や経験を得ることもできます。
コンサル会社での仕事は、プロジェクト単位が基本ですが、ひとつのプロジェクトが完了すると、そのプロジェクトは解散します。そして、新たなプロジェクトを組成して、別のクライアントのコンサルティングを行うのが通常です。ひとつのクライアント企業にとどまらず、複数の会社と関わることができるのが、コンサル会社の特徴です。
事業会社の特徴
事業会社は、自社の商品を製造し、販売したり、あるいは自社のサービスを開発して、顧客に提供したりします。自社の事業を広げるために、会社は社員を増やして組織化を進めます。また、事業を安定させるためにも、社員に会社への帰属意識を持たせ、長く勤務してもらうことを目指します。
もちろん、会社によって、その規模も違えば、部署によっても、働き方が異なります。部署間での異動も大きな経験になりますし、長期間勤めあげてキャリア形成することもできます。
働き方から見るコンサル会社と事業会社の違い
コンサル会社はプロジェクト単位で動き、事業会社は組織で動くことが多いといえます。では、働き方においては、どのような違いがあるのか、整理してみましょう。
プロジェクトの期間
コンサル会社はプロジェクトで動くのが基本ですが、事業会社でもプロジェクトを組成して、新たな商品開発をしたり、事業拡大のため営業網を充実させたりしていきます。
コンサル会社のプロジェクトは、契約単位で動くので、プロジェクトの期間も契約にしばられ、期間限定で短くなる傾向にあります。
一方、事業会社のプロジェクトは、比較的大きな経営課題目標にもとづいて、経営者がプロジェクトを組成することが多いので、プロジェクトの期間も自ずと長く設定されます。長いものでは数年にわたる場合もあります。
組織と個人のあり方
コンサル会社と事業会社との違いでわかりやすいのが、個人重視か組織重視かの違いです。
コンサル会社では、企業の抱える比較的難易度の高い経営課題に対して、会社に所属するコンサルタントが解決策を提示して、解決の道しるべを示していきます。
したがって、コンサルタント個人に対して、高度やビジネススキルと高い成果を求められます。この期待は、クライアントからだけでなく、所属するコンサル会社からも受けることになります。
一方、事業会社は、商品の開発から製造・販売を組織で推進していき、組織での目標達成が求められます。組織ではチームワークを大切にして、組織に所属するみんなで成功を目指すので、会社への帰属意識も高まり、その会社で長く働きたいと会社に愛着を持ちやすくなる傾向もあります。
思考法から見るコンサル会社と事業会社の違い
コンサル会社でのコンサルタントとして大切な思考法にロジカルシンキングがあり、論理的に思考することが重視されます。このロジカルシンキングが役立つのが、事業の規模を10から100へ拡大させる戦略を策定したりするときです。事業を拡大させた経験やノウハウをもとに、コンサルタントは論理的に事業拡大の戦略を立案することが求められます。
一方、事業会社では、市場競争も競合他社の変化も激しいビジネス環境で、既存商品のリニューアルでは戦えないこともあり、新たな商品を開発しなければなりません。その場合、0から1を生むクリエイティブな思考が求められます。
このような違いはありますが、最近では、積極的なクリエイティブな能力を持つ人材を取り入れ、新規事業開発を支援するコンサル会社も増えています。
転職から見るコンサル会社と事業会社の違い
コンサル会社での給与は、一般的に、事業会社より高いです。そのため、事業会社からコンサル会社へ転職したいという人も少なくありません。ここでは、コンサル会社と事業会社間の転職のメリットとデメリットを双方向から見ていきます。
コンサル会社から事業会社へ転職するメリットとデメリット
コンサル会社では、同じ部署で長い間仕事を続けることが難しいですが、事業会社では、長期にわたりキャリアを形成することができるのが、大きなメリットでしょう。このキャリアが次の転職で役立つ可能性もあります。
逆に、事業会社にも人事異動はつきものです。例えば、ITコンサルから、エンジニアとして事業会社に転職したとしても、営業に異動ということもあります。こうしたリスクがあるのが、事業会社への転職のデメリットかもしれません。
事業会社からコンサル会社へ転職するメリットとデメリット
コンサルの仕事は、高い成果が期待されるので、その分、高い年収も期待できます。また、コンサルタントとしての高度なビジネススキルを身につけることができるのもメリットです。
しかしながら、高い成果を期待されるコンサルの仕事は、精神的にタフな人に向いた仕事です。コンサルタントはプロジェクトごとに次々と課題解決をしていくので、その都度、高い成果が期待され、プレッシャーは常にあると見た方がいいでしょう。仕事のうえで、ストレスが続くことがデメリットと言えるかもしれません。
まとめ
コンサル会社と事業会社の違いを理解できましたか?ここでは説明していない内容もたくさんありますので、他の記事もぜひ読んでください。そして、この記事で得た理解をさらに深めていただけたら、とてもうれしく思います。